築50年 9坪ハウス

こんにちは。やまぐちです。

今年も関東に雪が降りましたね。
近年の冬は気温も高く、東北の降雪量も少ない年が続いていましたが今年は豪雪のようです。私は山形県米沢市で生まれ育ち、お正月に実家に帰省した際に祖母の家に行ってきました。小さい頃からよく寝泊まりしていていた祖母の家ですが、住宅建築に携わっている今、改めてじっくり見てみると「面白いな」とか、「すごいな」と感じる部分が多くありました。


祖母の家は、築50年を超えた延床面積9坪の長屋です。
給湯器や瞬間湯沸器はありません。なので水道の蛇口をひねっても温かいお湯は出ません。50年以上も前の建物なので、もちろん断熱材は無く、窓は木製でガラス1枚なので隙間風が。窓の鍵は、今では見かけることも無くなったキコキコ回すネジ締まり錠。夏は暑く、冬は寒いのにエアコンも無く、冬場の暖房はストーブとこたつのみ。今時期は室内温度=外気温状態なので、こたつで温まっていても白い息が出ます。トイレは汲み取り式のまま。階段はハシゴのように急で、お風呂は後付けのためキッチンの横に浴槽があります。
おまけに洗濯機は未だに二層式です。私が小さい頃から何一つ変わっていませんでした。

祖母は今年で80歳になりますが、未だにこの家に一人で暮らしています。「便利」とか「快適」が当たり前になっている今でも、この家に住まい続けている祖母を私は尊敬します。便利が当たり前になってくると、人は自分で考えることがどんどん少なくなって、どんどん機械に頼る生活になってしまうように感じます。祖母の家は不便すぎるかもしれませんが、少しくらい不便な方が、人は自分の知恵を絞って自分にできることを考えます。私は、そんな暮らしをしていきたいなと思います。

この写真は、祖母の家の「台所」をパノラマ撮影した写真です。左から勝手口・食器棚・キッチン・浴槽・洗い場・二層式洗濯機。今の住宅では考えられない空間です。今は、1坪のスペースにユニットバスを設置して、その横に1坪の洗面脱衣室が当たり前ですね。でも、この寒い家で熱々のお風呂に入り、台所に手を伸ばして冷たくて美味しいお水を飲むのは格別です。これが本当の露店風呂なんじゃないかと思ってしまうほど。

誰もが想像できる当たり前の住宅は、便利なものですが、ちょっと不便でも「こんなの見たことない!」というな住宅は、面白くて、楽しくて、この家に足を踏み入れた人に記憶に残り続けるのだろうと思います。
私たちがつくっている木造ドミノ住宅は、そこで暮らすうえでは安心で快適で心地よくて、でも室内の間仕切り壁は自分の好みで可変できることが、楽しくて、面白くて。そんな暮らしができる住宅です。そんな暮らしを望む人が増え、そんな家がもっと広まっていったら、街並みもきれいで楽しくなるのにな、といつも思います。

こたつで暖まっていたら、窓の外に雪が積もった柿の木が見えました。
今年の米沢は久しぶりの豪雪で、祖母の家は今年4度目の雪下ろしをしたそうです。私も将来、9坪ハウスで暮らすという夢ができました。

 

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